弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第7回は「監視カメラ」についてです。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」
こんにちは!弁護士の松本隆です。
3週連続掲載です!
第7回は「監視カメラはプライバシー権侵害?設置してもいいの?」です。
経営者としてやることはいつもたくさん。
でも、お店にいつもいられるわけではない。
そこで、「監視カメラをつけてみたい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は監視カメラについてお伝えしたいと思います。
“ヘアサロン経営者向けにわかりやすく”をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りします。
監視カメラをつけたくなるケース
①お金が合わないとき
「レジのお金が5000円足りない」というときってどうしていますか?
「従業員みんなで足らない金額を分担して出し合う」というお店もあるようですが、それは違法ですので、やってはいけません。
もし従業員がレジのお金を自分の財布に入れているとしたら横領罪ですから弁償させることができますが、証拠が必要です。
②材料の減りが早いとき
「サロンにあるはずの材料の減りが早い。従業員が持ち帰っているのかも…」ということはありませんか?
これは窃盗罪ですので、弁償させることができますが、やはり証拠が必要です。
③窃盗(空き巣、侵入盗)の防犯のため
令和元年秋頃に、愛知県で美容室のハサミが大量に盗まれる事件が起きました。
被害は、ハサミ9丁(時価34万円)、12丁(時価108万円)、2丁(時価15万円)、ハサミ9丁(時価52万6000円)などでした。同一犯による犯行です(なぜハサミばかりを狙ったのかはわかりませんが・・・)
ガラス張りで外から見えるサロンは特に、空き巣に狙われやすいのです。
④わいせつ行為を疑われないために(自己防衛)
近年、男性1人で経営するサロンが増えています。独立したはいいものの、人を雇うのは大変ですし、コロナのような非常事態を考えると1人の方が安心だったりしますものね。
ただ、よく聞くのが、1人サロンの男性経営者が「美容室でのわいせつ系の犯罪が報道されるたびに、もしやっていないのに『触られた』と言われたらどうしよう、と不安になる」という話です。
防犯カメラがあれば、わいせつ行為をしていないことの証明がしやすくなります(同じ理由で、タクシー運転手さんも車載カメラ=ドライブレコーダーの存在に助かっているそうです)。
理由は他にもあるかもしれませんが、監視カメラをつけたいと思ったことは経営者の方なら一度はあるのではないでしょうか。
従業員が反対していても監視カメラの設置は可能?
「よし、監視カメラをつけよう!でも従業員が反対したらどうしよう・・・」と思う経営者は存外多いようです。
監視カメラの設置で問題となるのは「プライバシー権侵害があるかどうか」です。
サロンの施術スペースで作業をする従業員は「周りの人に見られることをわかって施術している」ということもあり、見られて問題がある状態ではありませんので、プライバシー権侵害にはなりません。
「材料置き場」(バックヤードや倉庫)もサロンの施術スペースと同じですので、設置をしても問題ないでしょう。
なお、施術を受けるお客さんとの関係でも、お忍びで来るようなプライベートサロンでもない限りは、防犯目的のカメラの設置でプライバシー権侵害の問題にはなりにくいと言えるでしょう。
ただ、当然ですが、「更衣室の着替えをするスペース」や「トイレ」に防犯カメラを設置するとプライバシー権侵害が問題になります。「更衣室のロッカーでの窃盗が問題になっているからなんとかしたい」というニーズもあるかもしれませんが、その場合は設置する位置を慎重に検討すべきです。
さいごに
個人情報保護法にも触れたかったのですが、紙面の都合で別の機会にいたします。
防犯カメラのデータが漏洩すると問題になりますので、データの取り扱いは慎重に!
さて、防犯カメラについて、参考になることがあればうれしく思います。
あと、ご自身の車に車載カメラ(ドライブレコーダー)がついていない方がいらっしゃれば、早めにつけて下さいね!交通事故のときにも大いに役立ちます。
それではまた次回!
松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
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監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠