小林製薬が製造した紅麹サプリによる健康被害で、機能性表示食品という枠組みについても注目が集まりました。
身体に良いと思ってついつい買ってしまう健康食品ですが、その正体は何なのか。
今回の「週刊タイパニュース」では、機能性表示食品について解説します。
つい買ってしまう機能性表示食品
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
これまで紅麹サプリ問題について2回にわたって解説をしてきました。
このニュースの中で、改めて注目されているのが機能性表示食品という枠組みです。
「内臓脂肪を減らす」「脂肪の燃焼を高める」などと書かれている健康食品を指しますが、こうした宣伝文句を見ると、つい買ってしまう人も多いのではないでしょうか。
実は私も過去にダイエットで30キロ以上減量したことがあり、その際には身体に良さそうな食品を選んで買っていました。
「トクホ」との違い
さて、この機能性表示食品ですが、文献などの科学的根拠を消費者庁に届け出れば、国による審査などは経ずに、事業者の責任において機能を表示できるものとなっています。
似たような枠組みとして「特定保健用食品(トクホ)」というものもありますが、こちらは製品そのものを人間が摂取した場合の論文などが必要で、国が機能性や安全性について審査する許認可制となっています。
両方とも食品パッケージに健康のためのうたい文句を表示できるようになるわけですが、登録するハードルには大きな差があることが分かります。
その背景には機能性表示食品は国による成長戦略の一環として2015年に始まり、規制を緩和して企業が参入しやすくするため、あえて簡易的な方法が取られたということがあるのです。
紅麹サプリ問題は人災か?
今回問題となった紅麹サプリも機能性表示食品で「悪玉コレステロールを下げる」などと表示されていました。
そのため、安全性を審査しない国の制度によって健康被害が起きてしまった、人災的な側面もあるのではないかと指摘されています。
ただ、こちらについては前回解説したとおり、紅麹サプリの健康被害の原因がまだ特定されていないため、断定することはできません。
もし、紅麹自体が健康被害の原因であれば安全性について厳しい審査が必要だったという話になりますが、工場の衛生管理の問題だった場合には、機能性表示食品とはまた別の問題となるからです。
問題を通して新たな課題も
一方で、今回の問題を巡っては新たな課題も出てきました。
紅麹サプリが健康被害を引き起こしている原因の特定に時間がかかったため、最初に小林製薬へ被害情報が寄せられてから、記者会見で公表するまで2カ月かかり、対応が遅れて被害が広まってしまったのではないかと指摘されているのです。
もちろん、食品によって健康被害が起きたという因果関係を確かめなければ、発表すらできないという面もあるのですが、もう少し早く対応できなかったのか問われています。
そのため、今回の問題を経て、国は健康被害情報の報告義務化も含めた制度の見直しを進めています。
次回は、また別の話題について解説します。
ぜひ、お楽しみに!
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
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編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)