離婚後の子どもの親権のあり方が大きく変わる、共同親権の導入。
その背景には「子ども連れ去り」という社会問題があります。
今回の「週刊タイパニュース」では、この社会問題から共同親権についてさらに深掘りします。
共同親権導入の背景は?
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
前回、共同親権の導入によって、離婚後の親権のあり方が大きく変わることについて解説しました。
これまでは父母の片方のみが親権を持つ「単独親権」しか認められていなかったものが、「共同親権」によって父母双方が子どもに対して親権を持つことができるようになるということでしたね。
実はこの共同親権が導入されることになった背景の1つには、「子ども連れ去り」という社会問題がありました。
「子ども連れ去り」とは何か?
さて、「子ども連れ去り」と聞くと、皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
もしかすると、誘拐のようなものを想像する人も多いかもしれませんが、そういったものとは異なる事案となります。
「子ども連れ去り」というのは、まだ結婚している父母の片方がいきなり子どもを連れて別居をしてしまうことを指すのです。
残された親にとっては、急に配偶者と子どもがいなくなってしまうことになるわけですが、なぜこのような事態が起きてしまうのか。
連れ去ったほうが親権を得やすい!?
その背景にあるのが親権の問題だと言われています。
離婚をする際、これまでは単独親権しか認められていないため、どちらが親権を持つのか父母で争いになってしまう場合がありました。
しかし、実際に離婚をする前に子どもを連れて別居して数年間を過ごした場合、連れ去った親のほうに親権が認められやすいと言われていたのです。
親権が争点になった場合、家庭裁判所が父母のどちらが親権を持つか判断することになるのですが、このときに子どもの養育環境の安定が焦点の1つとなるため、子どもと長く過ごしている親のほうに親権が認められやすくなるということですね。
一部は国際問題にも
このような背景のもとで、片方の親が子どもを連れ去ることが社会問題となりました。
さらに一部では日本だけの問題ではなく、国際結婚をした日本人が海外から子どもを日本に連れ帰ってしまうという国際問題にも発展しています。
日本は、外国から子どもを連れ去ることを禁止する「ハーグ条約」に加盟しているのですが、こうしたことから共同親権を整備するようにEU議会から指摘をされたこともありました。
このような流れの中で共同親権が導入されることとなったのです。
一方で、共同親権の導入によってDVや児童虐待が継続するのではないかという懸念も指摘されています。
次回は、DVや児童虐待の観点から共同親権について解説します。
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
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編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)