小林製薬の紅麹サプリが健康被害を引き起こしている問題。
前回は「紅麹」とは何なのかについて基礎から解説しました。
今回の「週刊タイパニュース」では、なぜこの紅麹サプリが健康被害を引き起こしているのかについて迫っていきます。
健康被害の原因は?
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
前回の記事「紅麹とは一体何なのか?」では、健康被害を引き起こしている紅麹サプリについて、そもそも紅麹とは何なのかを説明しました。
紅麹とは、お米に紅麹菌を入れて発酵させたもので、悪玉コレステロールを抑えるモナコリンKなどが含まれるということでしたね。
では、なぜ紅麹を含んだサプリによって健康被害が発生しているのでしょうか。
シトリニンという成分が疑われたが…
実はその原因についてはまだはっきりと分かっていません。
当初、紅麹菌が作るシトリニンという成分が健康被害を引き起こしているのではないかと予想されていました。
前回、微生物が食材を分解した結果、人間にとって有益なものを作り出すことを発酵、有害なものを作り出すことを腐敗だと説明しました。
しかし、紅麹菌は有益なものだけでなく、腎臓などに悪い影響を及ぼすシトリニンという成分も作り出してしまうのです。
ただ、小林製薬はもともと、シトリニンが発生しない紅麹菌として2016年にグンゼから事業を譲受しています。
2020年には、世界で初めて全ゲノムを解析。シトリニンを生成しない紅麹菌であることを改めて証明し、その菌を用いて紅麹を作っていました。
実際に健康被害を引き起こしているサプリを分析してもシトリニンは検出されず、何が原因となっているのか分からない状態が続いていたのです。
本来ないはずのプベルル酸を検出
そこからさらに紅麹サプリの分析を続けた結果、本来含まれているはずのないプベルル酸とみられる成分が検出されました。
このプベルル酸は青カビなどから作られる成分で、毒性が非常に強いと言われていますが、人体にどんな影響を及ぼすのかはこれまで解析されていません。
ただ、ほかに原因となりそうな物質が見当たらないことから、このプベルル酸が健康被害を引き起こしたのではないかと言われています。
なぜプベルル酸が混入したのか?
なぜ、プベルル酸がサプリ内に入ってしまったのか。
その原因については未だに分かっていません。
紅麹菌が何らかの環境下でプベルル酸を作る可能性は極めて低いとされていますが、完全に否定されているわけではありません。
また、紅麹を製造する過程で、誤ってプベルル酸が混入した可能性もありますが、健康被害を引き起こした紅麹サプリを作っていた工場は既に閉鎖しており、衛生管理状況を確認するのは困難になっています。
こうした中で、健康被害については更なる原因究明が待たれます。
次回は、紅麹サプリで話題になった機能性表示食品について解説します。
ぜひ、お楽しみに!
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
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編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)