ニュースで大変話題になっている、自民党の派閥で裏金が作られていた問題。
これまで3回にわたって、裏金問題とは何か、裏金はどのように作られたのか、なぜ作られたのかを解説しました。
「週刊タイパニュース」の連載第11回では、この裏金問題について検察がどのような捜査をしているのか、解説をしていきます。
幹部議員は罪に問われない?
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
世間を騒がせている自民党の裏金問題について、週刊タイパニュースでも様々な視点から説明してきましたが、今回は検察が進めている捜査について解説します。
特に最近では、この裏金作りを主導していたはずの幹部議員が、罪に問われないで捜査が終わってしまうのではないかと報じられています。
一体なぜなのでしょうか。
4000万円以下の裏金は不問に…
裏金問題についておさらいすると、自民党の安倍派という派閥で政治資金パーティーが開かれた際に、国会議員がチケットノルマを超えて販売したお金が、記録をつけずにキックバックされ、裏金となっていたという話でした。
この問題について、検察は2つの視点に立って捜査をしています。
1つが国会議員個人の裏金に注目する視点です。お金を裏金として受け取った各議員の刑事責任を追及するというものですね。
しかし、この視点に立った時、検察捜査の世界では4000万円を超える裏金を作っていないと罪に問えないという暗黙のルールがあります。
100万円や1000万円程度の裏金作りだと、罪に問うほどの額ではないとして見逃されてしまうことが多いのです。
こうした法運用は一般的な市民感覚からはかけ離れているため、批判の声も多くあがっていますが、選挙で選ばれた政治家に対して捜査当局が与える影響は抑制的でなければならないという考えのもと、基準が出来てしまっていると言われています。
そして、この基準だと罪に問われるのはたった3人の国会議員だけなのです。
派閥全体の裏金作りも責任を追及
そこで、検察が注目したのがもう1つの派閥全体の裏金に注目する視点です。
そもそも派閥の政治資金パーティーの収入が過少記載されたところから裏金作りは始まっており、その額は5年間で約5億円とも言われています。
これだけの額の裏金作りをしていたわけですから、安倍派の幹部議員が主導していたはずで、その刑事責任は追及されて然るべきです。
「死人に口なし」で責任を否定
しかし、幹部議員は検察の事情聴取に対して「会長案件だった」と話しているようです。
つまり、安倍晋三元首相が裏金作りについては決めていて、自分には責任がないと言っているわけですね。
当の安倍氏は一昨年に銃撃事件にたおれ亡くなっています。まさに「死人に口なし」。
そのため、検察は幹部議員の刑事責任を追及するのは困難であるとして、彼らの立件は見送られてしまったのです。
(細かい点を補足すると、安倍氏は生前に裏金作りが問題であると中止を指示し、2022年4月にキックバックが取りやめられました。しかし、同年7月の安倍氏死去後にキックバックが再開しているため、この点については安倍派幹部の責任が問えるだろうと検察は踏んでいたのですが、証拠がそろわず、最終的に立件を見送ったとされています)
裏金作りを主導していたはずの幹部議員が罪に問われずに捜査が終結してしまうことについては、もどかしさも感じてしまいますよね。
さて、この裏金問題を受けて、自民党では政治への信頼を取り戻すために改革が進められようとしています。
次回は、その中身について解説します。
ぜひ、お楽しみに!
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
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編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)