④僕はパワースポット美容師になりたい
── みやちさんといえば、ヘアカラーのイメージが強いですけど、武道館のヘアショーではカットをされていました。サロンワークではどうされているのですか?
カットは好きなので、ずっとやっています。武道館のヘアショーでも、話さずに黙々と集中してやれたなら、もっとカッコいいカットをお見せできましたよ(笑)
── 特化型美容師やカラーリストのように分業が注目されるなかで、デザインカラーの第一人者と目されるような立場のみやちさんが自分でヘアカットをすることにこだわるのはなぜですか?
僕はどこのサロンが良くて、どこが悪いかと言うつもりはないんだけど、お客さまと寄り添いたいからカットも上手くなりたいと思いました。今でもシャンプーやトリートメントも僕がしたりします。ハイブリッドでいたいし、何よりお客さまが喜ぶことが大好きなのでなんでもやりたいです。
経営のことを考えたら、分業にした方が能率も効率もいいですよ。だけど、美容師はカットできたほうが楽しいでしょ。それに僕たちが扱っているのは人だからね。
美容室ってパワースポットじゃないといけないと思っているんです。髪を切ると気分が変わるじゃないですか。お店を出たときに、その人の幸福度が上がっているような感じ。だから、僕はパワースポット美容師になりたいと思っています。
⑤命をかけない程度に世の中を良くしていこうぜ
── 現在「SHACHU」は1店舗4フロアですが、全フロアにみやちさんが顔を出しているのですか?
日替わり弁当みたいな感じで振り分けられています。「今日、みやちさんは何階で」みたいに、予約数によってスタッフに指示された場所へ行く感じです。
オーナーだからといって、全部僕が決めるのって気持ち悪いんですよね。スタッフみんなのことが大好きだし、みんながやりやすいようにやってほしい。僕と話がしたいスタッフがいたら、すぐに話せるようにしたい。そのためには自分で決めないほうがいいんですよ。僕はみんなの応援団長だと思ってやっています。
――「SHACHU」というサロン名は、坂本龍馬が率いた亀山社中が由来だとか。
そうです。もともと幕末の歴史が好きで。「社中」って同じ目的を持つ仲間って意味があるんです。坂本龍馬たちは脱藩して命がけで世の中を良くしようとしたんですけど、僕たちは命をかけない程度に世の中を良くしていこうぜ、って(笑)。
── ヘアショーからも、今日のお話からも、変えていこう、良くしていこうという熱い気持ちを感じます。最後に、サロンの経営者、そして若い美容師さんへのメッセージをお願いできますか?
僕は経営者としてすごい未熟だと思うけど、「利益よりも元気」と思ってやっています。利益があっても元気なくなるようなことはしたくない。大きな利益を得るよりも、元気に生きていくことがテーマです。高級なお寿司とかじゃなくても、営業後にみんなで食べる牛丼とかがすごく美味しいし好きです。利益よりも元気があれば大丈夫!
あと、経営者にも若い美容師さんにも伝えたいのは、リスクヘッジばかり気にしていると何もできないから、やりたいことはやったほうがいいということ。何をしようとリスクは少なからずあるものなので。そして何より、お客さまを喜ばせることが大事だと僕は思います。
みやち のりよし
SHACHU 代表
MIYACHI NORIYOSHI/1984年に岐阜県で生まれ、山野美容専門学校を卒業。都内1店舗を経て2014年に「SHACHU」をオープン。インスタグラムのフォロワー数は27.7万人に上る。カラースペシャリストとしてセミナー講師や商品開発など多方面で活躍し、ヘアショーにも出演。サロンワークにとどまらず、活躍の場を広げている。
取材・編集・文/大徳明子 文/大山くまお 撮影/堀江宏旭