③「パナソニック史上最高のハイパワー」と「刺激レス」を両立したスムースエピ
では、功刀さんが開発した「スムースエピ」にはどんな新しい価値をつけたのでしょうか?
「ひげをケアする時の痛みをやわらげるために、独自の冷却機能を設けました。肌の表面温度を下げて刺激を抑えながら、IPLも従来品(※1)よりハイパワーでケアできるようになったんです」。
これは、照射面を約10℃に冷やす「スキンプロテクト冷却」が実現するもの。従来の「光エステ ES-WP98」に比べて、顔への使用時は30%(※2)、体への使用時は10%(※3)の出力アップが見込めるというもの。「パナソニック史上最高のパワー」と「刺激レス」の両立に成功しました。
※1 2022年発売の「ES-WP98」 ※2 ※1のフェイス用アタッチメントとの比較 ※3 ※1のボディ・Vゾーン用アタッチメントとの比較(いずれもパナソニック調べ)
すると「冷却したら効果は弱まらないんですか? ムダ毛ケアは“刺激があってナンボ”なイメージ。刺激がなかったら本当に効いているのか、逆に不安になる」と素朴な疑問を口にする坂手さん。
功刀さんは「IPLは黒い色に反応するIPLフラッシュで毛先に熱エネルギーを与え、ムダ毛に集中照射する技術。でも刺激を感じるのは肌の表面が多く、そこさえ冷えていればIPLの出力や効き目を弱くしてしまうほどの作用はないということがわかりました」と、何度も検証してきたからこその自信たっぷりに解説しました。
「刺激レス」は、功刀さんが、そしてパナソニックの美容家電部門が大いにこだわったポイントです。イヤな刺激があるものは続かない。続けなければ効果が出ない。だからこそ、購入して終わりではなく使い続けてもらいやすいようにと開発しています。
クリニックやサロンでケアしてもらう場合と違い、自分で行うホームケアは簡単に使えることがとても大切。取扱説明書を仮に読まなくても直感的に使えるくらいでないと、使い続けてもらえません。
「とにかくボタンは少なく、動作は最低限に、が鉄則です」と功刀さんは力を込めて話します。
坂手さんも「これなら初めての人でも気軽に使えますよね」と満足げ。ここ数年、坂手さんが働くインドネシアの美容室でも、男性客とする会話の質が変わってきているそう。「顔色をよくするファンデーションにはどんな色を使ったらよいか、爪の手入れはどうすればよいか、仕事柄よく聞かれるんです。その延長線上に“ムダ毛ケア”もある気がして」と興味津々です。
功刀さんも「美容のジェンダーレス化に対応できるよう、ライトグレーやネイビーのような“ニュートラルカラー”を本体に採用する傾向もありますね」「素材の質感もマット調にして傷がついたりしないよう、高級感を演出しています」と潮目の変化を感じ取っている様子。
従来のパナソニックのイメージである「安心・安全」だけでなく、個性豊かで独創性に満ちた唯一無二の製品づくりを目指しているそう。これもダイバーシティ(多様性)の表れといえそうです。
④信頼性の土台を可視化する「パナソニックビューティラボラトリー」
美容業界にはファブレスカンパニー、工場を持たずに企画のみを行う企業も少なくない。対照的に、連綿と続く歴史のなかで研究開発に膨大なリソースを割いてきたパナソニック。
「環境に恵まれていますよね。自身のひらめきから開発ができ、あれこれ試行錯誤ができて、仲間もたくさんいる。社外のモニターさんからのフィードバックも受けてすぐに次の構想に反映し、開発を進めていけるのは当社の強みだと思います」と功刀さん。
しかし、それだけ質の高い研究開発をしても、いわゆる“中の人”である技術者の思いが表に出る機会はあまりないのが実情。
そこでパナソニックが立ち上げたのが、研究者・技術者にフォーカスしたメディア「Panasonic Beauty Laboratory(パナソニックビューティラボラトリー)」です。
ここに掲載されている研究者・技術者のインタビューからは、何度も繰り返し挑戦を続ける奮闘の日々、その原動力、そこから生まれた確かな効果を提供するテクノロジー、そして製品の信頼性が伝わります。
もちろん、功刀さんのインタビューも。「取材の話が来たのは開発が山場のときで、『今ですか?』と正直思ったんですけど、お客さまの美容のためのテクノロジーは何なのか、どんなことを研究開発しているのかを知ってもらうって大事なことなので出させてもらいました。反響があってうれしいです」。
最後に、功刀さんが美容師さんに望むことを聞いてみると「自分でいろいろ試して比較することの大切さを、美容師さんからお客さまに伝えてほしい」との言葉。
「今はインフルエンサーが紹介していたから、いいと聞いたからという理由で選ぶ人も多いです。でも、特に美に関することは個人差もありますし、自分の体で実際に試さないとわからないことがたくさんあります。そういった試行錯誤が美を高めるのに大事だよっていうニュアンスを伝えてもらえたらうれしいです」
そして、坂手さんに同行取材の感想を聞くと「何か一つのプロダクトがあったとして、その裏で開発している人の思いを聞くことってないじゃないですか。研究者から『あれが面倒くさい』とか『これは使える』みたいな人間臭い一面が見えたのが面白かったです」。
坂手さんの言にもある通り、いま手にしている商品の一つひとつに多くの人が携わっていますが、その奮闘や思いを聞く機会はなかなかありません。技術者・研究者のリアルな言葉が詰まった「Panasonic Beauty Laboratory」を読むと、美容室やお客さまの自宅で使われているドライヤーやシェーバー、光美容器を見る目が変わるかもしれません。
>> 「Panasonic Beauty Laboratory」をチェック(公式サイト)
功刀 公太
パナソニック研究所員
KOTA KUNUGI/1989年生まれ、山形県出身。大学で振動工学を学び、「家事の効率化を目指せる洗濯機をつくりたい」という思いを抱えてパナソニックへ入社。洗濯機の先行開発に関わったあと、美容家電の技術開発を手がける。最初の一台となる試作品の開発から、量産への見通しを立てる工程を担う。2023年3月発売の「光エステ スムースエピ ES-WG0A」に採用されている冷却システムやIPL(光フラッシュ)照射方式の開発にも携わった。
坂手 遼治
Atelier by Ryoji オーナー
RYOJI SAKATE/大阪府出身。20歳で上京し、南青山の美容室に3年勤め、英ロンドンへ語学留学。現地のサロンで3年働き、一時帰国後に渡米する。米ニューヨークのサロンで3年働いて帰国。2015年4月、インドネシア・ジャカルタに1号店をオープン。2019年4月に2号店を出店した。2022年には「マツコ会議」に出演し、富裕層をターゲットにした店舗展開で注目を集める。
編集・取材・文/大徳明子 撮影/岡タカシ