── 複数の店舗を経営されているのに、意外な発言です。
実は、BtoB事業の売上が6割を占めているからです。シニアをターゲットにしたフィットネス大手のビジュアルワークを請けたり、シニア向け商品を監修したり。
たとえば、酒造会社の日本盛がオトナ女性のメイクブランド「Que serasera(ケサラセラ)」を立ち上げるのに協力しました。最近は、シニア向けの雑誌「ハルメク」の企画でリップを作りましたよ。
今の時代、美容室はもう飽和状態です。でも、シニアに特化した美容室や写真館を運営していることが独自の強み、ブランディングになるので、企業との仕事につながっています。
── そのカテゴリーの第一人者になると強いですね。新聞やテレビ、雑誌などへのメディア出演も盛んです。
だいたい2週間に1度のペースで出演依頼をいただいています。シニアに特化した情報となると、必然的に僕らが関わる流れになることが多いんです。
── スタッフの皆さんもサロンワークから企業案件まで業務が幅広いですね。何人いらっしゃるのですか?
美容サロンのスタッフは美容師8人、ネイリスト6人、エステティシャン2人です。
お客さまと年代がちかいほうがいいので、基本的に20代は採用しません。介護職出身の20代が1人いるだけです。美容室は40代と30代が中心で、60代のアシスタントも活躍しています。
── お客さまだけでなく、シニアのスタッフも活躍できるのはいいですね。
オープンして4年経ちますが、離職したのは1人だけ。長く働きやすい環境だと思います。
美容業界は、お客さまは美容師個人に付いているという意識が強く、それがスタッフの独立や離職を招いていると思います。うちは指名による歩合がなく、サロンワーク以外の仕事もあるので、えがお美容室のお客さまという感覚ですね。
── 美容業界の課題である集客、採用ともに順調なのですね。価格競争についてはいかがですか?
そこも問題ありません。「えがお美容室」はシニア世代に特化しているので、これといった競合がない。だから、自分たちのサービスの価値に見合った値段を自由に付けられます。
もちろん、売上の数字だけを追い求めたら、お客さまの需要を見失います。だから、お客さまが笑顔か、喜んでもらえたかという視点を常に持ち続けています。
── まさに「えがお美容室」ですね。
店名を決めるとき、意味がすぐにわからない英語やフランス語にはしたくないと思って。お客さまが喜ぶサービスを提供するのだから、そのままストレートに「えがお美容室」としました。
えがおって、すごくポジティブな言葉。ひらがなと漢字の組み合わせはめずらしいので、雑誌のクレジット一覧でもパッと目立ちます。この店名にしてよかったです。
── 超高齢化社会の日本でとても強いビジネスモデルですね。このノウハウの提供を始めたそうですが。
シニアに特化した「えがお美容室」ならではのノウハウや知見にもとづいたサロンのプロデュース事業を、今年から始めました。
新規出店を促すというより、既存店舗をリブランディングして立て直すことがメインです。このため一般的なフランチャイズのように屋号を統一するのではなく、看板に「〇〇〇〇〇〇〇 PRODUCED by EGAO」と今までの屋号を活かした形になります。
美容室が抱える課題や問題に、いっしょに向き合っていきたいと思います。
太田 明良
株式会社サンクリエーション 代表取締役
OTA AKIYOSHI/2014年に株式会社サンクリエーション創業。同年、東京・巣鴨にシニア世代専門の「えがお写真館」をオープン。2018年に「えがお美容室」、2019年に「えがお洋品店」「えがお 爪工房」、2022年に「えがお美癒堂」を開業。シニア世代に特化したサービスを展開している。
編集・取材・文/大徳明子 取材・文・撮影/水上ゆかり
■ あわせて読みたい
Page: 1 2