小さな美容室も退職金を! 「企業型確定拠出年金(DC)」を社労士が実例解説

経営・業界動向
小さな美容室も退職金を! 「企業型確定拠出年金(DC)」を社労士が実例解説

美容室の労務にくわしい社労士の中嶋有美さん(なかしま社労士事務所)

退職金制度がある美容室は、まだまだ少ないのが現状です。

しかし、規模の小さなサロンであっても「企業型確定拠出年金(DC)」に加入できます。私の顧客の例をご紹介します。

監修・文/中嶋有美(社会保険労務士)

①小規模サロンが企業型DC

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、退職金制度のひとつです。

やはり加入しているのは大企業が中心ですが、今回ご紹介するのは、昨年3店舗目を出した小規模サロンです。

今年で開業6年目、昨年に法人化したばかり。従業員は正社員が6名、パートスタッフが5名。今まさに、企業型DCの導入を進めているところです。

②将来が保障されていない、そんなイメージを変えたい

なぜ、企業型DCに加入するのか。その理由をオーナー様にお聞きしたところ、「美容師は退職金もないのが当たり前で、将来が保障されていない業界と思われている。そんなイメージを変えていきたい」との言葉が返ってきました。

確かに、うちの事務所では美容室のお客さまが150件ありますが、スタッフの退職金について制度があるサロンは1社だけです。ちなみに150件の内訳は、法人19事業所、個人131事業所です。

開業10年以内のお客さまが9割以上で、そのほとんどが3店舗以内のサロン。比較的小規模のサロンが多いということもあるとは思います。

美容室は全国に26万軒あり、1店舗あたりの平均スタッフ数は2.13人。全国的に見ても、小規模サロンが圧倒的多数であることは間違いないと思われます。

③企業型DCを勧める4つの理由

退職金制度を作る場合、以前であれば「中小企業退職金共済」のような共済に加入をする、または生命保険で運用することが一般的でした。

今回、お客さまに退職金制度の中でも企業型DCをお勧めした理由としては、以下の4点です。

<1>退職金制度がないサロンが多い中、大企業と同じ退職金制度があると、求人にも有利な効果が期待できます

<2>オーナーも加入することができ、その掛け金は会社の経費になります。また、役員が個人で加入するiDeCo(上限2.3万円)より掛け金額の上限が高くなる(上限5.5万円)ことも魅力のひとつです。

<3>将来の退職金を、個人の努力次第で増やすことができます。企業型DCの掛け金の運用は、スタッフが指示する投資信託・債権等を購入するという仕組みです。そのため、将来受け取る年金額が増える可能性があります(減る可能性もあります)。

<4>加入後1年未満の退職の場合も、不支給にならない。※中退共でかつ加入後1年未満の場合は、退職金の支給もなく、会社にも返金はありません。

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