サロンの税務調査では、「売上の計上漏れはないか」「プライベートの支払いが経費に含まれていないか」が主な調査対象となりますが、業務委託サロンだけがチェックされる項目があります。
それが、『業務委託スタッフに支払う報酬は実質的には給与ではないか』という点です。
関与先のお客さまで、サロンを2店舗経営されている方に税務調査が入りました。
1店舗は雇用サロン、もう1店舗は業務委託サロンです。正確には、2店舗目は雇用サロンとしてスタートしましたが、途中からご自身で勉強して業務委託サロンに切り替えて経営をされていました。
税務調査で問題となったのは、2店舗目で働いていた業務委託スタッフに支払った報酬が、実質的には給与ではないか?という指摘でした。
最終的に、追加納税金額は400万円ほどになりました。
これでも十分大きな金額ですが、実は、税務署から提示された最初の追加税額は1000万円を超えていました。何度も交渉を重ね、最終的に400万円の税額で決着したのです。
ざっくりとした内訳として、月額33万円、年間396万円のスタッフ報酬が給与認定を受けると、次のようになります。
1年分 | 3年分 | |
消費税 | 360,000円 | 1,080,000円 |
源泉所得税 | 766,800円 | 2,300,400円 |
加算税 | 112,000円 | 336,000円 |
延滞税 | 85,600円 | 256,800円 |
合計 | 1,324,400円 | 3,973,200円 |
調査で問題となったスタッフは3名。
最初は全員で1000万円超という話でしたが、交渉の末、2名は実質的な給与ではないと判断されました。それでも1名は給与認定を回避できず、400万円ほどの追加納税となりました。
次に、「外注費として処理してきたものが、給与と判断された場合」の税金の影響についてです。
業務委託スタッフへの報酬は、消費税の計算上は仕入税額控除の対象となりますが、もしも給与と判断されると消費税額が増えます。
また、業務委託スタッフとは雇用契約を結んでいませんので、雇用スタッフであれば作成する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は当然存在しません。
もしも給与と判断されれば、本来は源泉所得税を天引きする義務がお店側にあったとして源泉所得税の納税義務が発生し、なおかつ、徴収税額は「乙欄」となり税額も大きくなります。
先ほどの内訳の通り、消費税よりも源泉所得税の方が金額は大きくなります。これに加えて、加算税、延滞税も必要となります。
源泉所得税は、給与と認定された者(業務委託美容師)が支払うものですが、実際には、お店が納税した後に業務委託スタッフに請求することになります。この立て替えた分を業務委託美容師から回収するのは簡単なことではありません。
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