給与として認定されないために、気を付けることは何でしょう。
税務調査では、業務委託契約書の有無や確定申告の実施の有無などではなく、スタッフの実質的な働き方が問われます。その判断基準はいわゆる「税務通達」をもとに判断されます。
税務調達の判断基準は、下記の通りです。
非代替性 |
スタッフが休んだ時に、スタッフが変わりの人を用意するのか、お店が用意するのか |
時間的拘束 |
お店が働く時間を指定しているか、報酬の計算が時間を単価として計算しているか |
指揮監督 |
働き方の具体的な内容や方法について、報酬を支払う側の指揮、監督を受けているか |
危険負担 |
災害など不可抗力により仕事が出来なかった場合にどちらが リスクを負うのかの取り決めがあるか |
材料等の支給 |
仕事で使うハサミ、機材、水物などの材料をお店が用意しているか、自分で用意しているか |
すべての判断基準を満たしていなければならない、というものではなく、外注費か、給与かはこういった基準から総合的に判断されます。
先ほど例にあげた、税務調査を受けたサロンは、もともと雇用サロンとしてスタートし、途中から業務委託サロンに切り替えました。
給与認定された方は、「従来から使っていたタイムカードを業務委託契約になった後もそのまま継続して使用していた」ことが給与認定の主な要因となりました。
こういった事態を避けるためにも、働き方のルールとして雇用スタッフとの違いを明確にし、お店で働く業務委託スタッフにも理解をしてもらうことが大切です。
税務調査で給与認定された場合の税金の影響額はとても大きく、経営上の大きな障害となりかねません。
最近はフリーランスという働き方が増えてきていますが、実はどの業界でも業務委託への報酬と給与の税務判断がトラブルになるケースが多数存在します。
美容業界においても働き方の多様化はますます進み、業務委託サロン、シェアサロンで働く美容師の数も増えていくと思われます。それぞれの働き方にある税務リスクを認識した上で、サロン経営者、そこで働く美容師の双方が安心して働ける環境を準備することがとても重要です。
中嶋 政雄
税理士/なかしま税務労務事務所 ・代表/株式会社スカイコンサルタント・代表取締役
NAKASHIMA MASAO/大学卒業後、28歳で税理士登録。「必ず生存する美容室をつくる」をコンセプトに、美容室開業前の立地診断、事業計画、創業融資サポートを得意とする。美容室の開業相談の数は300件以上。創業から支援したサロンの廃業はゼロ。180軒以上の美容室に顧問税理士として関わる。
監修・文/中嶋政雄(税理士) 編集/大徳明子
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