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「美容師さんをワクワクさせたい」 リトル・サイエンティスト野村恭稔社長インタビュー

バイオ技術で新たな原料を生み出したい

── 本社のある愛知県一宮市は、繊維業が盛んです。野村社長も前職は繊維関係の会社で働いてらっしゃったとか。

一宮市は僕の出身地です。大学卒業後は、日本合成ゴムというプラスチック合成ゴムの会社に就職しました。

当時、ブームとなっていたバイオ(生物学)関連の新規事業を会社が立ち上げたんです。そこでバイオの技術を用いてプラスチックやセラミックに代わる新しい原料の研究をしていました。

プラスチックを作るための石油系原料を微生物に食べさせ、現在の化学合成では作れない構造のモノマーを吐き出させて、それをポリマーにする技術開発です。何千度という熱にも耐えられるうえにセラミックよりも軽い耐熱性プラスチックを作ってロケットの部品に活用できないかという研究テーマでした。

リトル・サイエンティストを創業した野村恭稔社長

── 実にロマンがありますね。ロケット開発というのは、やはり科学を志す人にとっては大きな目標なのでしょうか。

宇宙科学は魅力的でしたね。プラスチックを使って新たな産業を生み出すことが主な目標でしたが、将来的に石油がなくなるので、石油に近いものを生み出す生物を作るという研究もしていましたよ。

事業を立ち上げたばかりということもあって、会社から大阪大学の大学院へ研究生として通わせてもらいました。

「大学院ではたった1人で研究をしていたのですが、米・ジョージア大学まで行って話を聞いたりと充実していました」

しかし、景気が悪くなり、会社の社長が交代すると、バイオ部門は要らないという話になったんです。一緒に研究していた人たちは他の工場や研究所へ次々と異動になりました。

僕は、たまたま地元にある中日本繊維工業組合墨総合研究所が研究者を募集していると聞き、地元に戻るのも悪くないと思って、今度はウールの研究を始めました。

そこで開発したのが「プロティキュート」という高分子ケラチンです。形状記憶スーツや従来の黒色よりも真っ黒なスーパーブラックスーツに応用されました。

②目指したのは、根本的なケア

── その後、「プロティキュート」は化粧品分野にも応用することができたのですね。

それまで染料を使ってもうまく染まらなかったり、色落ちが激しかったりしたのをバイオ技術で真っ黒にしたのが、スーパーブラックスーツでした。髪の毛にも使えるのではということになり、化粧品メーカーに売りこみました。

しかし、経営は思わしくなく、事業を終了して研究に使っていた機械を売却することになったんです。その時、買い取ってくれた化粧品原料メーカーの一丸ファルコスから声がかかり、理美容室向け商材の研究開発を任されました。

リトル・サイエンティストの本社。ジブリ映画に出てきそうな雰囲気

「プロティキュート」の工場ができて大量生産を始めて7年ほど経ったところで、僕は会社を辞めてリトル・サイエンティストを設立しました。自分で作った原料をより良く使ってもらいたいという思いがありました。

なぜなら、ケラチン配合のシャンプーといっても、実際にどれくらい入っていて、どれほどの効果があるのかはよくわからないわけです。一般用はそれでよくても、プロフェッショナル用となるとそうはいきません。

パーマやカラーで髪の毛がダメージを受けたり、年齢とともに髪の毛が細くなってきてボリュームが出なくなったり、そういうお客さまのためにケラチンをたっぷり使って根本的なケアができないかと。

本社内のバルコニーにて。吹き抜ける風が心地良い

── ダメージケアに特化した商材ということでしょうか。

20年くらい前、トリートメントというのはシャンプーの付録のような扱いで、トリートメントだけでお金がもらえるような存在ではなかったんですね。

しかも、1週間も経たないうちに効果がなくなってくる。それどころか美容室へ行ったその日に家でシャンプーをしたら取れてしまう。それくらいの能力しかなかったトリートメントを高分子のケラチンを使って1カ月、2カ月と効果が続くようにレベルを上げていきました。

その頃は「プロティキュート」をメインに使っていましたが、3、4年くらい前から第2世代となる活性ケラチンを開発し、効果はほぼ半永久的となりました。それが「リケラエマルジョン」という商品になります。

独自開発の活性ケラチンを配合した「リケラエマルジョン」(ヘアケアEXPOのブースにて。撮影:筒浦奨太)

③不正流通との闘い

── 「リケラエマルジョン」の開発がターニングポイントとなったわけですね。

当社は研究開発をする力はあるものの、ずっと営業力が弱かったんですね。代わりに売ってくれる仲間が増えてきて、代理店になった美容師さんが年商数億の経営者になったケースもありました。美容師ではない人も続々と近寄ってきて「売ってあげるよ」と優しい言葉をかけてくれました。

「良いものを作ることができても、売り方を知らなかった。だから売った人たちがすごく儲かる仕組みになっていました」

研究者の立場からすると、それはとても楽なんです。その反面、実際に商品をお使いいただいているお客さまのことがわからない状態でした。意識的に遠ざけられているようなフシもありました。「売ってやるからお前たちは良いものを作ってくれればいいんだ」みたいな。

── まるでメーカーと下請けのような関係ですね。

そうです。だんだんと売る側がメーカーになってしまって、弊社のラインナップにないポジションの商品をあちこちで作りはじめて、「これを足せばもっと効果が出る」などと言って売るようになったんです。そんな中でネットへの不正流通が発覚しました。

本社内の研修ルームにて

サロン様へ卸す価格よりも安く売っているわけですから、代理店のどこかがやっているのは間違いないと思いましたが、いくら調べてもわかりませんでした。そのうちに当社がネット通販に商品を流しているのではないかとあらぬ疑惑をかけられました。サロン様からの信用を失い、収益が半分以下になりました。

3年がかりで不正な流通ルートを突き止めましたが、とても親身になってくれていた代理店が裏で悪さをしていたことがわかりました。さすがにショックでしたね。しかも当社が倒産するという悪質なデマを流されました。私が不倫しているというデマまでありました。

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