── そこからどのようにして信頼を回復されたのでしょう。
とにかく、あらゆるところに私自身の顔を出そうと、セミナーを始めました。当時は1年365日のうち3分の2はセミナーで外へ出かけていましたね。北海道から沖縄まで全国を巡りました。
それと同時進行で研究開発もしていました。一丸ファルコスさんが作ったケラチンは原料として流通しているので、他社も当社と同じような商品を作ることができるわけです。
それなら、自社開発の原料でうちにしかできないものを作ろうと。そうして生まれたのが活性ケラチンを配合した「リケラエマルジョン」でした。
当時の主力は「ベータレイヤー」でしたが、これは一丸ファルコスさんのケラチンを使った商品なので、シリーズをすべて廃番にして「リケラエマルジョン」に切り替えました。
そして、不正流通が起こらないような代理店にしか卸さないことに決めました。当社にしかできない商品を開発して、商品ラインナップを一新しなければ、失った信用を取り戻すことができないと思ったんです。
── 社内や代理店の反応はいかがでしたか。
営業部の社員には猛反対されました。代理店もこれまで扱ったことのないものを売ることになってしまうので、積極的に動いてくれなくなりました。結果的にネットでの不正流通はなくなったものの、売上は伸び悩みましたね。
そんな中、僕は誰よりも早くインスタグラムを始めて、商品を研究者として紹介しました。それに対して、実際に使った美容師さんがインスタライブやストーリーで取り上げてくださったんです。
それがだんだんと広がって、一般のお客さまの間でも「どこで売っているのか」「ネットでも扱っていないし、いくら調べてもどこにも売っていない」と話題になり、会社に問い合わせが来るようになりました。
その頃に新型コロナの感染拡大があって、お客さまがなかなかサロンへ行けなくなりました。そこで当社からお客さまのご自宅に商品を直送し、収益をサロン様に還元する「だからこそ前へ」ショップを緊急事態宣言中に開きました。店を閉めていても利益が出るので大変喜ばれましたね。
── インスタというのが今どきの話ですが、今も昔も口コミの力はすごいですね。
送料の負担もあって、正直、収益的にはマイナスでした。でも、サロン様から感謝されるし、コロナが収束してからは一生懸命売ってくれています。おかげで一般のお客さまもインスタで紹介してくださるようになりました。
「損して得とれ」と言いますが、やはり、そこまでしなければ信用を得ることはできないと実感しました。
当社から直接商品が納品されるサロン様のことを「リトルメイト」と呼ぶのですが、その申し込みが1カ月に30件程度だったのが、今は200件から300件くらいは来ます。
また、噂を聞きつけた代理店からも連絡が入るようになりました。不正流通の経験から、慎重にならざるを得ません。しっかりと見極めたうえで契約を結んでいます。
商品もすべてロット管理を行い、1本1本、どこの代理店からどのサロンに売られたのかわかるようにしています。
── 最後に、今後の展望をお聞かせください。
「リトル・サイエンティスト」は“子供の科学者”という意味です。子供が初めて虫眼鏡を持ってアリの行列や花を眺めたときのワクワクする思いを一生忘れないようにしたいという思いで名づけました。
一方、美容師さんはお客さまに種蒔きをして、芽が出て、花を咲かせて、実を結ぶ。つまりお客さまに喜んでいただく。私たちが作る商品は、その種であると思っています。これからも美容師さんがワクワクするような商品を提供してまいります。
野村 恭稔
リトル・サイエンティスト代表取締役
NOMURA YASUTOSHI/名古屋大学卒、大阪大学工学博士。リトル・サイエンティスト、GS、フィオラボ、野村総合粧剤研究所を起業。高分子ケラチンを開発し、形状記憶スーツなどに応用。バイオ染料の研究で繊維学会論文賞を受賞。
取材・編集/大徳明子 取材・文・撮影/永谷正樹
■ あわせて読みたい
→ オリジナリティを大切にするリトル・サイエンティスト(CHAINONチョン・テインさんのヘアケアEXPOレポート)
→ 独自開発のケラチン配合! リトル・サイエンティストのマゼラン&リケラ トリートメント
Page: 1 2