離職経験のある美容師にその理由を聞くと、最も多い回答は「サロンの雰囲気やテイストが合わなかったから」、次は「給与に関して不満があったから」です。
「結婚・妊娠・出産のため」以外は、先ほどご紹介した「働くにあたって最も重視するもの」の裏返しのような回答になっています。興味深いのは、「給与」よりも「サロンの雰囲気やテイストが合わなかった」ほうが離職の原因になっているということです。
「サロンの雰囲気やテイスト」は「人間関係、そのサロンでのキャリア、サロンの方向性」とも読み替えることができそうです。入社前にしっかりとすりあわせておくことが大切ですし、入社後も定期的な面談などでスタッフとしっかりと目線をあわせることも必要かもしれません。
一度は美容師を辞めても、再び業界に戻ってくる方もいます。今回の調査では、4割の美容師が辞めた経験があると答えていました。
これは、一度は美容師を辞めても、機会があれば再び業界に戻ってくる可能性が高いとも言えます。採用難の現状では、休眠美容師の活躍に対する期待は依然として大きいです。
復職のきっかけの1位は「資格を活かした仕事の方がよいと再認識したから」です。髪を切るという仕事は、誰にでもできる仕事ではありません。美容師資格を持った方しかできない仕事です。3位「その仕事が好きだから」も含め、美容師を離れた期間に、改めてその価値に気づいたということかもしれません。
2位には「勤務条件にあうサロンが見つかったから」がランクインしています。ニーズにあった勤務条件が見つかれば、美容業に戻ってきたいと思っている方は今なお多いのかもしれません。
美容師の仕事に対する価値観も、働き方も多様化しています。様々な働き手にあった働き方が整う業界が、持続的な成長・発展を可能としていくのではないでしょうか。
■ データ出典
・ホットペッパービューティーアカデミー 「美容サロン就業実態調査(2023年)」
■ 調査対象
<スクリーニング調査>15歳以上の男女
スクリーニング実施時点での主な職種
美容師/ネイリスト/エステティシャン(脱毛・フェイシャル・ボディ)/リラクゼーションセラピスト(整体・リンパなど)/まつげエクステスタッフ・まつげパーマスタッフ
<本調査>美容サロン従事者
2,660人回収(ヘア:1,020人/ネイル:210人/エステティック:500人/リラクゼーション:779人/アイビューティー:151人)
※本寄稿は、上記のうち「ヘア」のデータから構成した。
調査実施時期:2023年2月
田中 公子
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
TANAKA KIMIKO/前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。調査研究員として、「美容センサス」をはじめとする美容サロン利用調査や美容消費の兆しを発信。セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。共著に『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか。
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