ヘアサロンとのコラボレーションで、「Smart Salon(スマートサロン)事業」を立ち上げたミルボン。2023年1月にはヘアサロンMINXが全国初となるスマートサロン「MINX Shibuya smart salon」を東京・渋谷に、2月にはヘアサロンGIENが「GIEN Smart Salon by milbon NU chayamachi+」を大阪・梅田にオープン。美容室における新たなヘアケア購入体験を提供している。
MINX Shibuya smart salonオープン時の記者会見で、「2026年には、全国100都市でスマートサロンを展開していきたい」と語った佐藤龍二社長。業界随一の登録人数、45万人のmilbon:iD(ミルボンiD)会員を基軸に、サロンの店販の新しい形を提案する構えだ。
この、ミルボンの新展開。実は、佐藤社長が20年前、企画部時代に構想した「お客さま宅配サービス」が元になっているという。6000万円を投資して失敗した事業がいま、ミルボンの基幹ビジネスに発展している。
業界ナンバーワンメーカーとして成長を続けるミルボン。新しい発想が生まれる風土の醸成、失敗を推奨する企業文化について、佐藤社長に聞いた。
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20年前から構想をあたためてきた
── 記者会見でお話された、「宅配サービスを20年前から構想していた」というエピソード、しかも6000万円もの費用をかけたという話に驚きました。一度失敗した事業を再び興すことができたのはなぜでしょう。
そこは、社長ですので!(笑)
── トップダウンですか!(笑)
というのは冗談ですが、この事業構想に関しては、私が強い意志を持ってリーダーシップをとってきました。
たしかに6000万円も投資して実らなかったわけですが、ミルボンには失敗をリスクと考えない土壌があると感じます。当時、私は企画部長で、社長は先代の鴻池でしたが、「お客さんのために考えて、お客さんにとって本当に必要だと考えた上での失敗だから」と、前向きに評価してくれました。
── その時はなぜうまくいかなかったのでしょうか。
当時は、今ほど店販の重要性が認識されていなかったんですよね。やはり、技術売上が何より大事だと。
そこから20年経って、美容室を取り巻く事情は大きく変わりました。少子高齢化も進んでいるし、働き方も変化した。その環境下で時間あたりの生産性を上げていくには、やはり店販が重要になってくる。
また、当時は、デジタル的なインフラが整っていなかったこともあります。
「チャレンジしなさい」といつも伝えている
── アマゾンの日本語サイトオープンが2000年ですから、20年前というと、ECの仕組みも整っていなかったですよね。とはいえ、当時の6000万円の投資は今以上に大きな金額。普通の企業だと、出世ルートからは外されそうです。
でも、そのチャレンジを推奨するのが、ミルボンなのです。
私自身も社員には「チャレンジしなさい。失敗してもミルボンは、そうそうつぶれたりしないから」といつも伝えています。ただし、報告はしっかり聞きます。そうすると、上手くいきそうにないときは、だいたい本人が自ら気づきます。
大事なのは、「自分で気づくこと」なんですよね。失敗しそうだと思ったときに、私がそれを止めてしまうと、人はチャレンジしなくなる。でも、自分で「あ、このままではダメだ」と気づいたときは、また再チャレンジする気持ちが湧いてくる。
研究開発でも、事業開発でも、否定することはあまりしない。やりたいのならやったらいいよ、と。ただし、会社がどの方向に向かおうとしているのかは言いますし、「どういうメリットを美容室に作るのか、そこは明確にしてね」と伝えます。