③業務委託美容師がインボイス番号を取得しない場合
業務委託美容師がインボイス番号を取得しない場合、今まで通り、消費税の確定申告、納税は必要ありません。ただし、業務委託サロン側の消費税負担が変わることで報酬体系に影響を受けることは十分考えられます。
業務委託サロンが受ける影響
インボイス番号のない業務委託美容師への報酬は仕入税額控除が認められず、国に納める消費税が増加します。今のところ6年間の「経過措置」が認められており、消費税額は次のように推移します。
インボイス番号の取得を求めない場合、サロン側が負担する消費税額をどうやって吸収するかが経営上の課題になります。
インボイス番号の取得は求めない、その代わりに報酬を引き下げるといった話も出てくると思われますが、このような取引条件の見直しは独占禁止法違反行為や下請法違反行為に該当しないよう注意をする必要があります。
④美容師が安心して働ける環境を
業務委託美容師がインボイス番号を取得したことにより負担する消費税額というのは、税負担が増える業務委託美容師だけの問題だけでなく、業務委託サロン側にもとても重要な情報です。
「あのサロンではインボイス番号は要らないらしい」
「インボイス番号を取得すると大変だ」
こんな話を聞いてしまうと、だれだって不安になります。漠然とした不安から、お店に言われるまま番号を取得しても大丈夫か? と不安になり、条件の良さそうな他店に移ってしまう可能性もあります。ウチの店はインボイス番号がなくても大丈夫だから、という提案をする業務委託サロンも出てくるでしょう。
サロン側にしっかりと知識があれば、インボイス番号を取得することで、自分はいくら負担が増えるのか、その増える負担に対してお店からはどんな対応があるのか、この負担であればインボイス番号が不要と言っているサロンよりも実質的に手取りが多い、なんてことも判断出来るようになり、業務委託美容師の不安も解消できるはずです。
業務委託サロン経営者と業務委託美容師では、手にする情報の量、質には大きな違いがあります。業務委託美容師が安心して働ける環境を作るため、お互いにとってインボイス制度による影響をしっかりと共有することが大切です。
中嶋 政雄
税理士/なかしま税務労務事務所 ・代表/株式会社スカイコンサルタント・代表取締役
NAKASHIMA MASAO/大学卒業後、28歳で税理士登録。「必ず生存する美容室をつくる」をコンセプトに、美容室開業前の立地診断、事業計画、創業融資サポートを得意とする。美容室の開業相談の数は300件以上。創業から支援したサロンの廃業はゼロ。180軒以上の美容室に顧問税理士として関わる。
監修・執筆・作図/中嶋政雄(税理士) 編集/大徳明子
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