今回で4回目を迎える連載『Jobシンガー・missatoが行く』。音楽が好きな美容師さんに、仕事観やおすすめの曲についてうかがいます。
インタビュアーを務めるのは、働く人にインタビューして曲をつくり歌として届ける「Jobシンガー」のmissato(みさと)さん。
マンツーマンサロン「西荻窪音楽美容室 DON’T(ドント)」を営む希世美さんにお話を聞きました。
目次
- 「働く人に寄りそって曲をつくり歌います」
- 今回の音楽好き美容師・希世美さん
- ①美容師になったきっかけ
- 自分のお店を持つと決めていた
- やりたいことには賞味期限がある
- ライブハウスでモデハン
- DON’Tの由来
- ②忘れられないお客さま
- 髪の毛を触られるのが苦手なお客さま
- ③仕事と音楽
- 音楽を好きになったきっかけ
- 希世美さんにとって音楽とは
- ④希世美さんの仕事観
- 無理して会話する必要はない
- 美容室への苦手意識を払拭したい
- 美しい刈り上げはハサミでつくる
- ⑤希世美さんの描く未来
- めざすは「型に縛られない美容室」
- 引退後は、焼き芋屋さんになる
- ⑥チョキチョキ切っても切れないもの
- ⑦おすすめの一曲
- 思い出のベストな一枚
- 仕事が楽しくなる一曲
- 仕事が辛い時に聴きたくなる一曲
- 若手美容師に聞いて欲しい曲
- 取材を終えて
「働く人に寄りそって曲をつくり歌います」
こんにちは。Jobシンガーのmissato(みさと)です。
Jobシンガーとして、実際に現場を見学し、時にはいっしょに作業を体験し、自分でインタビューを行い、職業の曲をつくり歌う活動をしています。少しずつ曲数も増え、今は「美容師の歌」「保育者の歌」「タクシー運転手の歌」など11曲になりました。
この活動を通して、「働くこと」を軸に、さまざまな価値観を学んでいきたいと思っています。
今回の音楽好き美容師・希世美さん
希世美
きよみ/西荻窪音楽美容室 DON’T 店長
都内の美容室にて2年間修業した後、25歳で独立。ハサミで仕上げる刈り上げなど繊細なカットが得意。趣味はライブ巡りで、ライブハウスで踊るのが大好き。二児の母親としても忙しい日々を過ごす。
▽Instagram=https://www.instagram.com/dondont8
西荻窪音楽美容室 DON’T
西荻窪駅から徒歩4分。リラックスして施術を受けられる「自然で自由な空間づくり」をモットーにしている。
▽住所=杉並区西荻北3-12-4
▽公式サイト=https://kiyomidont.wordpress.com/
①美容師になったきっかけ
小さいころから「美」への興味がありました。クラシックバレエを11年間習っていたので、「美しく魅せる」ことについて、貪欲に追い求めてきたと思います。
犬の美容師・トリマーに憧れていた時期もありましたが、本格的に進路を決めたのは高校2年生のころ。美容師に路線変更しました。
というのも、昔から美容室には苦手意識を感じていて……。何度も同じ話をさせられたり、子どもだからとマッサージしてもらえなかったり。いかにもマニュアルに沿った対応で、お客さんを正面から見ない姿勢が不満でした。
だったら自分の理想の美容室をつくってみたいなと思ったんです。
自分のお店を持つと決めていた
小学校低学年のころから、将来「何になるか」より「何のお店を持つか」が重要でした。だから、美容師になってから途中で独立したいと思い始めたのではなく、はじめからお店を持つことが大前提。
目標は「25歳までに自分の店を持つ」。その目標を叶えるためにひたすら走ることを決めました。
やりたいことには賞味期限がある
キャリアのスタートとして選んだのは、三鷹の美容室です。店長には2年後に独立を考えていると伝えたうえで、入社しました。
そのころは、いかに最短で技術を身につけるかを徹底的に考えていましたね。やりたくない、できないではなく、とにかく「やる」。ストイックに仕事をしていたんです。
就職して2年で独立すると決めていた理由は、美容師としての情熱が一番高まっている時期に、あらゆる人の髪を切って、あらゆる人をキレイにしてあげたいと考えていたからです。
私が年を重ねて技術も身についたころには、もしかすると「別に独立しなくてもいいかな…」と思うかもしれない。
だったら「やりたい、挑戦したい」という情熱が燃えているタイミングで、自分の店を持つべきだと考えたんです。
ライブハウスでモデハン
独立した時に、お客さんについてきてほしいので、ちゃんと戦略も考えていました。
私が将来オープンする美容院の立地は、ライブハウスがたくさんある西荻窪や高円寺、阿佐ヶ谷あたりの中央線沿い。2、3駅くらい隣のエリアであれば、常連さんたちがついてきてくれるかなぁと思ったので、最初のサロンは三鷹にしました。
あとは、奇抜な髪型に挑戦したかったので、同期が駅前でモデハン(モデルハンティング)する中、私はライブハウスで若いバンドマンに声をかけていました。
開店資金を貯める必要があるので、節約にも気をつけていましたね。自分の店を持つまでは実家に住ませてほしいと親に頼みこんで、稼いだお金はほとんど独立資金として貯めていたんです。
独立について、働き先の美容室の店長や先輩は応援してくれました。人に恵まれ、良い環境だったとは思います。
でも、雇われて働くのがどうしても苦しかったんです。私の思い描く心地よい美容室の姿とは違うんですよ。
お客さんの中には、施術中に話しかけられたくない人もいるし、スタイリング剤の購入を勧められるのを嫌がる人もいます。だけど店のマニュアル通りの対応をしなきゃならない……。
我慢することは多かったけど、理解ある先輩が支えてくれましたし、「いま私は雇われているんだ」と自分に言い聞かせていました。そして「自分の店を持ったら、最高に安心してリラックスできる美容室をつくるんだ!」と自らを奮い立たせていたんです。
独立のためのアイデアノートに書いていた「やりたいことリスト」は、どんどん増えていきましたね。
DON’Tの由来
三鷹の美容室に就職してから2年後、宣言通りに自分の美容室をオープンすることができました。店名は「西荻窪音楽美容室 DON’T」です。
ちょっと変わった店名ですよね? よく言われます。
西荻窪という街と音楽が好きなので、あえて店名にも入れました。“にしおぎ”の人は、ユーモアのある人が多いので、自分のやることを面白がってくれるだろうなと思っています。
「DON’T」は私の好きなバンド「ボ・ガンボス」のボーカル・どんとさんのお名前からいただきました。彼は、めちゃくちゃ陽気な人柄で、自分の殻を破っているのが魅力的なんです。
そして、これは後付けなんですけど、「Don’t」は私のモットーとも深く関わっているんです。
「Do not have a sad face. I make it to a wonderful hair. 」
意味は「悲しい顔をしないでおくれ。私が素敵な髪型にしてあげるから」。
お客さんに安心して来てもらえるような美容室をめざして、こんな想いも店名に込めています。
②忘れられないお客さま
髪の毛を触られるのが苦手なお客さま
とあるお客さんに、とても印象的な言葉をいただきました。
「あんたが死んだらどこで髪を切ったらいいか分からない。だから、死なないでね」って言われたんです。
その人は、他人に髪の毛を触られるのがイヤで、私以外の人には触れられたくないそうです。私を美容師として選び、本当に信頼してくれているんだなと、うれしい気持ちが込み上げてきました。
私はやりたいことをしているだけで、お客さんから受け取ることばかりだなぁと思いますね。
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「無理して会話する必要はない」