1975年創業のb-ex(ビーエックス)は、モルトベーネからビューティーエクスペリエンス、そして現社名へと2度の社名変更を行い、ロレッタやスロウなどの有力ブランドを世に送り出し、いち早くSDGsやデジタル化に取り組んできました。
このすべてを31歳の社長就任からの20年で進めた福井敏浩社長に、その歩みと今後の展望をうかがいました。
①SDGsを柱の一つに
── インタビュー前編では主力ブランドであるロレッタやスロウの開発秘話をうかがいました。後編ではまず、熱心に取り組まれているクリーンビューティーについてお聞きしたいと思います。
クリーンビューティーとは、人や環境に配慮して開発された美容製品のことです。
特に、台湾発の「オーライト」の展開には力を入れています。原材料の調達から製造、輸送、販売、消費、廃棄、リサイクルまでの過程でCO2排出量をプラマイゼロにするというゼロカーボンコスメです。
2021年9月にオーライト社と資本業務提携を行い、10月には私自身も取締役として入りました。
オーライトの大きな目標として、サロンから世界のゼロカーボンを実現しようという「グリーンプロジェクト」があります。まずは、2030年までにサロンにおけるCO2排出量を45%削減することを目指しています。
── 2022年3月に開催された「第1回グリーンサミット」には、数々の賛同サロンがリアルとオンラインで参加されていました。その後の動きはいかがですか?
コンセプト商品なのですぐに広がるものではないですね。一軒一軒臨店して地道に普及活動を行い、ラインナップも徐々に増やしています。だんだん問い合わせが増え、オーライト社から引き継いだ有楽町の直営店の売り上げもあがってきました。
継続は力なり。コツコツやっていくしかない。ある点を超えればバーッと一気に広がる商品だと認識しています。
── オーライト以外にも、クリーンビューティーを拡充する動きが目立ちます。
イスラエルのラヴィド社と日本国内における独占販売契約を締結し、2021年6月より、植物化学に基づくクリーンビューティーブランド「ラヴィド」を販売しています。
また、この月には、ロングセラーブランドの「クレイエステ」についても健康や環境、社会、動物に配慮した処方とパッケージに刷新し、クリーンビューティーブランドとしてリニューアル発売しました。
── 2022年11月には、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の公式サイドイベント「ワールド クライメート サミット(WCS)」へ参加されたそうですね。
WCSはワールド クライメート ファウンデーション(WCF)が主催し、気候変動をテーマに議論する場です。サミット開催地であるエジプトには、世界各国から66の企業や団体が集まりました。b-exは日本の美容企業から唯一参加し、パネルディスカッションにはオーライトのスティーブン・コー代表が登壇しました。
b-exはSDGsを経営の柱の一つとし、長期ビジョンとして「アジアNo.1クリーンビューティーカンパニー」を目指しています。これからも、さまざまな取り組みを行っていく予定です。
②お客さまに利するオムニチャネル
── オーライトやラヴィドは、オムニチャネルで展開されているのも興味深いです。なぜ、オムニチャネルなのでしょうか?
自分がお客さまならどこでどのように買うか。その購買行動に合わせ、バラエティショップ、百貨店、ECサイトと可能な限り接点を多くしていくとオムニチャネルに行きつきます。
どのような流通、媒体を通して届けるのか、そしてどのような製品であるかさえ手段でしかない。あくまでも「美の体験」を届けることが当社のミッションです。
美容業界では、サロン専売で美容師さんの利益率の高いものが良い商品とされがちですけど、お客さまに支持されなかったら市場に残らないですよね。やはり、お客さまに支持されるもの、良い体験となるものを提供することがサロンへの貢献になると思います。
── 業界の慣習にとらわれない広い視野は、コンシューマー向けも扱っていることが影響しているのでしょうか?
どうでしょう。ただ、一般市場のデータや見立てがわかるのは、プロフェッショナル向けを扱う上でも利点です。
同時に、髪のプロフェッショナルとしてのメーカーがつくっているということが、コンシューマー向けの強みになっています。
③コンシューマーブランドの選択と集中
── プロフェッショナル向けとコンシューマー向けは相乗効果があるとのことですが、それでいてコンシューマー向けは大幅にアイテムを削減されました。なぜでしょう?
ドラッグストアビジネス向けは、商習慣として返品が多いんです。ノンシリコンシャンプーブームのころは、コンシューマーもプロフェッショナルと同じくらいの売り上げがあったのですが、ブームが去ると返品ラッシュで、まるでバブルが弾けたかのようでした。
返品によって生じるロスは、当社が本腰を入れて取り組んでいるSDGsにも反しますし、やはりミッションや考え方を同じくするところと取り組みたい。それでコンシューマーブランドの整理を進めた結果、いまは全体売上の8割をプロフェショナルが占めています。今後はコンシューマー向けとして、直営店や百貨店、バラエティショップ、ECでの展開に力を入れていきたいと考えています。
── コンシューマー向けの整理とあわせ、自社工場も売却されたそうですが。
ドラッグストア向けのビジネスのために建てたもので、返品による負のサイクルを断ち切るために手放しました。
実は、創業時からファブレスなんですよ。強みやメイン機能が販売や製品企画からマーケティングに変わっただけで、根本的には変わらない。脈々と受け継がれているDNAみたいなものですね。