2022年9月より美容室も対象となった「エコマーク」。
株式会社デューアソシエが運営する「ビューティマルシェ ミンナノ」のららぽーと愛知東郷店が2022年10月、美容室として初のエコマーク認定を受けました。
エコマークを取得するまでの経緯やサロンでの取り組み、デューアソシエの今後の展望について日比谷美奈子代表取締役社長と事業部の井上真樹さんにお話を伺いました。
①「美容室」カテゴリー新設からスタート
── 今回どのような経緯で、美容室初のエコマーク認定を取得することになったのでしょうか?
日比谷美奈子社長(以下、日比谷) 今回エコマークを取得した「ビューティマルシェ ミンナノ ららぽーと愛知東郷店」は、2020年9月にオープンしました。
「人も地球も美しく」をコンセプトに掲げ、メニューや商品を考えていたのですが、何か世の中にきちんと伝わる形はないかな? と登録制度を探し始めたんです。
その時に、セブン&アイ・フードシステムズや吉野家が2017年に飲食業で初めてエコマークを取得したという記事を発見。サービス業でもエコマーク認定が受けられると知り、美容室でも登録しようと動き始めました。
── 2年以上も前から、動き始めていたのですね。
日比谷 はい。ところが、登録してみようと思って調べたら美容業界のカテゴリーがなかったんですよ。
「カテゴリーがそもそもないや、さてどうしよう」と思い、公益財団法人日本環境協会のエコマーク事務局に問い合わせたら、「カテゴリー(商品類型)をつくってみませんか」と打診があったんです。
── カテゴリーをつくるのは、大変だったのではないでしょうか?
日比谷 大変でしたが、カテゴリーができれば、業界全体として盛り上がるのではないかと思いました。
美容業界でも個々の企業やサロンで、環境問題について取り組んでいるところはありますが、業界全体での取り組みはあまりありません。どこか1社が大きく打ち出していくことで、業界全体で一緒に取り組めるようになったらいいなと思いました。
そこで「ちょっとダメ元でやってみようよ」と、事業部の井上と一緒に申請書類や新設書類を作成しました。
── その後は、どのように進んでいったのでしょうか?
日比谷 エコマーク協会から「有識者を募って考えてみたい」という連絡がありました。そこで弊社も美容業界の情報を提供し、協会からの質問にどんどん答えていきました。
井上真樹さん(以下、井上) 何回も有識者の方や環境関連の財団の方など、いろんな方と打ち合わせを重ねて、認定基準の項目を決めていったんです。
── そして2022年9月に「美容室」の認定基準が制定されたのですね。
井上 すごくうれしかったのもあるけど、本当に長かったですね(笑)
②カラーサーバーやシャンプーバーを導入
── エコマーク認定基準には5つの評価基準があります。ビューティマルシェ ミンナノでは、実際にどのような取り組みをしているのでしょうか?
美容室のエコマーク認定基準
5つの評価カテゴリー
①提供サービスに関わる環境配慮
②廃棄物のリデュース、リユース、リサイクル
③店舗の省エネと節水
④環境負荷を低減する店舗運営
⑤ステークホルダーとのコミュニケーション
※5つのカテゴリーから4つ以上を選択する必要がある
井上 まずは、エコな備品や設備の使用ですね。備品は、エコマーク認定のティッシュペーパーを使用しています。
設備でいうと、植物由来のカラー剤をお客さまに合わせて調合できるカラーサーバーを導入し、カラー剤のアルミチューブの使用量削減に取り組んでいます。
店舗で使用している照明も省エネルギー型機器(LED照明)です。
あとは、オートシャンプーを導入し、節水にも取り組んでいます。
── 「ステークホルダーとのコミュニケーション」というカテゴリーもありますが、具体的にはどんな取り組みでしょうか?
井上 店販品の持ち帰りのために、マイバッグの持参を推奨しています。
また、シャンプーやトリートメントを詰め替えで販売する「シャンプーバー」も設置しています。人にも地球にも良いものを目指して、ボタニカル成分を使用したシャンプーとコンディショナーを、リユースできるボトル容器で販売しているんです。
必要な分だけ選んで買えるエコな取り組みは、お客さまからも好評ですね。
── 実際にサロン運営する中で、特に大変なことはなんですか?
井上 一番大変だったのは、ゴミの廃棄量の把握です。「ゴミを何kg廃棄したのか」と細かくデータとして残して把握しないといけないのが大変でした。普段サロンでは、ゴミをどれくらい捨てたか、把握していないと思います。
ただ幸運なことに、ビューティマルシェ ミンナノが出店しているららぽーと自体が、ゴミの廃棄量を把握する取り組みをしていて、ゴミを捨てるときに重さを測って、ゴミ袋にシールを貼って出していました。
今回、ららぽーと愛知東郷店ではよかったのですが、今後ほかの店舗でやるときは、大変だと思います。
③ファミリーサロンにもエコの視点
── ビューティマルシェ ミンナノはららぽーと愛知東郷店が1号店ですよね。デューアソシエは、ファミリーサロンの「デューポイント」を東海地方を中心に全国に90店舗FC展開していますが、ビューティマルシェ ミンナノをスタートした理由はなんですか?
日比谷 デューポイントもビューティーマルシェ ミンナノもどちらもターゲットはファミリーなんですが、デューポイントはより合理思考の強い消費者を想定しています。
基本はマックスバリュやバローなどのスーパーの中にあり、お買い物のついでに寄っていただける利便性とリーズナブルな価格が売りです。
── ビューティマルシェ ミンナノの特徴はなんですか?
日比谷 ミンナノは、環境や食べるものに少し高い意識をもってお買い物をされる方をターゲットとしています。ららぽーとも、環境問題への意識が高いお客さまが集まりやすい商業施設なので出店しました。
店販ではオーガニックの商品を扱っています。メニューもレディースのカット料金は3,850円とリーズナブルだけど、デューポイントよりもちょっと高い設定になっています(デューポイントは3,000円)。
── オーガニックやエコを打ち出そうと思ったきっかけはなんですか?
日比谷 家庭の中でも意識するポイントや響くポイントが、やっぱり変わってきてると感じます。
我が家の下の子が小学6年生なんですけど、学校からの宿題に、環境やSDGsに関するものが本当に多いんですよ。
時流の変化をひしひしと感じ、お客さまにも環境や健康を意識したサロンが喜ばれるのではないかと思ったのがきっかけです。
── そうして、コンセプトに「人も地球も美しく」を掲げたのですね。
日比谷 「自分だけ美しくなればいいのではなく、地球のことも考えなければいけない」というのが社内テーマです。
もう遅いぐらいかもしれませんが、子どもたちのために、できることを片っ端からなんでもやっていかないと非常にまずいと思っています。
── 実際にサロンをオープンしてから、お客さまの反応はどうですか?
日比谷 お客さまがすべて声に出して言ってくださるわけではないので、はっきりは分かりませんが、客数と売上は順調に伸びています。
お客さまもミンナノのコンセプトに共感してくださってるんだな、と言うのは感じていますね。
④エコマーク普及のハブに
── デューアソシエの今後の目標や展望をお聞かせください。
日比谷 今年、デューポイントをリブランディングしたいと考えています。ファミリーヘアサロンから、もっと伝わりやすい「コミュニティヘアサロン」へと生まれ変わる予定です。
メニューやオペレーションも変え、地域に根ざし、コミュニティの一部となるようなサロンを目指していきます。
── エコマーク認定の店舗は、今後も増やしていきますか?
日比谷 できるかぎり増やしていきたいですね。
あとは、1社だけで終わらないことも大事です。よくある、SDGsのバッジをつけて終わり、というのではなく、取り組むサロンさんが増えていかないと、本当の意味で貢献できたことにならないと思っています。
── これからエコマークを取得したいと思っているサロン様に向けて、アドバイスはありますか?
日比谷 今後、サロンオーナーや幹部の方向けに、店内エコツアーのようなものもしたいと思っています。
デューアソシエがハブとなり、エコマークを普及する流れをつくっていきたいと考えているので、気になった方はぜひご相談ください。
ビューティーマルシェ ミンナノ
デューアソシエが展開するファミリー向けのヘアサロン。2020年9月にららぽーと愛知東郷に1号店をオープン。2022年10月、ららぽーと愛知東郷店において美容室で初となるエコマークを取得。2023年2月には2号店となるプライムツリー赤池店がオープンした。
取材・編集・文/杉野碧 文/橘花ちこ